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GNSSシミュレーションの未来はソフトウェアで定義される

ここでは、Orolia社シミュレーション製品ラインディレクター、Lisa Perdue氏へのインタビューの内容を紹介します。

より優れたGNSSシミュレーションアーキテクチャを構築する為に、SDA (Software Defined Architecture)や、SDR (Software Defined Radio)、GPU (Graphics Processing Units)、といったCOTS製品がどのような役割を果たすのかを説明しています。

Q: GNSSシミュレーションの定義におけるSDA (Software Defined Architecture)とは何ですか?

A:  根本的には、SDAによって1つのハードウェアを複数の方法で使用できるようにする、ということです。そのハードウェアを再プログラムして、ジャマー、スプーファー、またはGNSS信号として機能させることができます。それぞれをサポートするために、新しいハードウェアを設計する必要はないのです。ソフトウェアがハードウェアを制御するのであって、その逆はありません。プログラミングが必要なFPGAを持つ代わりに、ソフトウェアはSDRを利用して信号を生成し、COTS GPUを利用して必要なパワーと複雑さを拡張することができるのです。

Q: ソフトウェアがハードウェアを指示するシミュレーターは、すべて技術的にソフトウェア定義されているのではないですか?

A:  いいえ。弊社(Orolia社)の GSG-5やGSG-6を含め、市販のシミュレーターの多くは、用途が決まっている基板(Board)を搭載しています。その基板を、好きな周波数帯に使うことができるのです。ランタイムになると、ソフトウェアが基板に「L5を走らせろ」といった命令を送ります。次に、同じ基板で「L2を走らせろ」ということもできますが、そのハードウェアは、決まった命令でしか動かないように設計されているのです。そのため、ハードウェアが想定していない新しい信号、新しい機能、新しいシナリオが現れたとき、ソフトウェアには命令を下す手段がありません。従って、ハードウェアが想定できる範囲内で、ソフトウェアがハードウェアに命令をだせるところ迄がソフトウェア定義されていると言えます。

Skydelが提供する真のソフトウェアデファインドシミュレーション(software-defined simulation)は、ハードウェアにとらわれません。L5バンドやL2バンドを理解するためにハードウェアをハードコードする必要はありません。必要なのは、GPUとSDRを活用してシミュレーションを実行する方法を知っているソフトウェアだけなのです。

Q: なぜFPGAではなくGPUを使うのですか?

A: 最大の制約は、手持ちのハードウェアで生成できる信号の数です。FPGAが信号を生成するシミュレータでは、ハードウェアのチャンネルが固定されています。FPGAでプログラムを組むと、そこから生成できる信号の数は限られてしまいます。GPUは並列処理に適したマルチコア構造を持っているので、より多くの衛星を生成することができ、ハードウェアのチャンネルに縛られることがないのです。

GPUを搭載したシミュレータは、全方位衛星を可能にします。価格とシミュレートできる衛星の数のトレードオフを選択する必要がありません。空から見えるものなら何でもシミュレートできます。GPSが12個、GLONASSが10個、Galileoが10個なら、GPUを使えば、FPGAを追加で購入しなくても、全部見ることができるようになるのです。GPUのパワーで十分なのです。

Q: これらのことは、ユーザーにどのようなメリットをもたらすのでしょうか?

A: コストが一番のメリットです。すでに市販されているハードウェアを利用し、ニーズに応じて拡張することができます。例えば、Intel NUCのような非常に小さなフォームファクターを使って自分のオフィスから信号を出したり、一番大きなフルラックの多素子Wavefrontシステムで高度なアンチジャムアンテナのテストを行うのにも、どちらも同じソフトウェアを使って対応する事ができるのです。

機能面でも大きなメリットがあると言えます。弊社の研究開発(R&D)は、数年で交換が必要になる新しい信号に対応するための専用ハードウェアの構築ではなく、ソフトウェアを可能な限り高度化することに費やされるからです。ハードウェアの性能は、NVIDIA社のような世界最高のGPUメーカーにお任せすることにしています。新しいSDRが市場に出てくれば、私たちのRFを生成する方法を指示するドライバを書くだけで良いのです。そして、新しい信号やユースケースが現れたら、ソフトウェアの更新としてユーザーに通知するだけで、ハードウェアのアップグレードやサービスを行う必要はありません。

Q: GNSSシミュレーション業界の次なる展開とは何でしょう?

A: 私は拡張性について触れましたが、これがこの業界の方向性だと思います。

高度なシミュレーションを必要とするGNSSの研究をしている小規模な衛星のスタートアップやUAVのスタートアップ、大学研究室が沢山ありますが、必要なコストや知識が参入障壁になっています。

私たちは、シミュレーションの機能を犠牲にすることなく、誰もがアクセスでき、簡単に学べるようにしたいと考えています。しかし、これには、新しい使用例が常に現れており、誰もそのすべてをカバーするソフトウェアを書こうとしないことを認識する必要があります。ですから、他のソフトウェアと同様に、ユーザーが特定のユースケースのために独自のプラグインを書いて共有できるような、オープンソースのアーキテクチャがより求められるようになるでしょう。私たちOrolia社は、そのような需要に応える為に、弊社のプラグインのGithub、ユーザーコミュニティ、そしてアカデミックパートナーシッププログラムでGNSSの研究を行っている世界中の40以上の大学との密接な協力によって、ユーザーが未来を定義する為の手助けになる準備に力を注いでいます。

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